8月1日・本戦初日・感動の後編


 スタートから約1時間、Leidenschaftはなんのトラブルもなく無事に最初の1周を終えて帰ってきた。コースは1周31km、時速60kmで走っても30分はかかる果てしなく長いコースだ。トラブルによるタイムロスを考慮に入れれば、時速35km/h程でまわってきたことになる。当初は「JonaSun」についていく予定だったがトラブルにより、その計画は早くも崩れてしまった。自分たちでペースをつくっていくしかないのである。それは、今年はじめて「まとも」なレースを体験するMeisterにとって、右も左も分からない大海原に投げ出されたに等しかった。
 3Lap終了したところでピットインして早川さんから二宮さんへドライバー交代。大会のレギュレーションで「一人のドライバーが3時間を超えて新たな周回に入ることはできない」というものがある。最低でも1日に2回はドライバー交代を行わなければならないのだ。
 現在、総合順位は23位。早川さんは3周の間に50台以上をゴボウ抜きしたことになる。

 スタート時のトラブルが嘘のようにLeidenschaftは確実に周回を重ねてゆく。しかし、ピットでの計画通りにラップタイムがなかなか上がってくれない。ペースアップを指示するが、このままでは本日の目標周回数、10周が危うくなる。Leidenschaftの胃袋、リチウムイオン電池は過電流に弱い。あまり大きな電流が流れないように、急な加減速は避けなければならない。5周目終了時でバッテリー残量は約77%。バッテリーをいたわりながら、Leidenschaftは周回を重ねる・・・。

 14時44分、本日2回目のピットインを終了して再びLeidenschaftがコースへ戻ってゆく。本日最後のドライバーは2年生の大石。レースは16時に終了だ。16時を過ぎて新たな周回に入ることはできない。現在の周回数は6周。本日の目標は9~10周だが、このままでは8周が限度。8周で我慢して、充電に多くの時間を割り当てるか、16時までに2周して、OverTimeを利用して、9周を目指すか、選択をせまられる。

 議論の末、天候が良くないので、後者を選択、ストレートで50km/hを指示して、1時間15分で2周を目指す。Leidenschaftのモーターは唸りをあげてどんどん加速し、最高速度に達した・・・。

 ドライバー大石は最初のラップを36分37秒という今までにないタイムでまわってきた。そのまま2周目に突入する。残り時間は40分を切っている。ピットにいる人間全員がかたずを飲んでLeidenschaftの帰りを待つ。16時までに帰ってこれなければMeisterは貴重な1周を失うのだ。
 15時58分、コースの向こうに銀色に輝く車体があらわれた。Leidenschaftだ。間に合ったのだ。その瞬間、ピットが歓声に包まれた・・・。
 ぎりぎりで9周目に入り、本日最後の周回を終えてピットへ帰ってきたLeidenschaft。この時のことを当時の電気班主任、山田氏はピットログに次のように記している。
 15:58という本当にぎりぎりの時間に大石は帰ってきた。本当にドラマティックである。ピットの連中は緊張で胸が張り裂けそうなところだっただけに、本当に充実した感触を得られた。ピットとドライバーの一体感と充実感、去年全く得られなかったものである。

本日の総合順位 23位(クラス11位)


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