TJY WSR2002 参戦日記

Part3 Chase and Escape (大会2日目)
Aug 03 2002

2002年8月3日 6:00 - 充電中


想通り、というか、目が覚めると外は薄曇りだった。最新の天気図をチェックすると、日本海側から寒冷前線が南下しつつあった。天気は崩れる方向に向かっている。食事中のガメラの電流計も、頼りない数値が並んでいる。それでも、昨日の夕方の充電で20%程残量を回復できたのが救いだ。

昨日と同程度の日射が得られれば、なんとか14周走れる計算だが、天候を考えるとそれも難しそうだ。逆に、天気が良すぎると上位チームは発電量にまかせてペースをアップできる。そうなると、70km/h巡航が限界のガメラにはついていくことができない。ほどほどの天気がベストなのだ。

現在同一周回のチームの動きも気になるところだ。1日目、ガメラと同じく13周したのは、再輝、東海大付属翔洋、育英高専、三菱マテリアル、青山学院、そして玉川ドルフィンの6台。どこも実力のあるチームばかりだ。晴れれば発電量の差で勝つことはまず無理。まずはぎりぎり14周可能なペースで様子を見ることにする。スタートドライバーの海ちゃんにペースを指示して、2日目のレースが始まった。

8時34分、翔洋のFALCON、玉川ドルフィンの黄色い車体に続いて、海ちゃんの操るガメラが戻ってくる。他の13周組はまだ戻ってこない。さすがにこの天候では、なかなか冒険することができないようだ。ガメラも若干ペースを落とし、目標を13周に再設定。天候が崩れる明日に備えて、バッテリーを温存できるようにする。ピットにはいつの間にか西風が吹くようになっていた。やはり、前線が近づいてきているようだ。




レース開始から2時間ほどが経った。各チームも目標周回数が定まり、ペースが落ち着いてきている。隣のピットの青山学院は34分前後のラップを維持して快調に周回を重ねている。どうやら14周狙いのようだ。

予想外だったのが、日射の割には発電量が多いこと。ソーラーカーレースでたまにあることだが、適度に雲が出ていると、雲によって日光が散乱され、あらゆる角度から太陽電池に光が入る。そのため、見かけ上の日射よりも大きな発電量が得られる。今がちょうどその状態で、ガメラも若干充電気味で走行しているが、青学のペースについて行くのは難しい。

三菱マテリアルと育英高専をターゲットに定める。この2チームには何とかして先行したい。

 「でっかいやつ」その2。三菱マテリアル、SUNチャレンジャー。
 今回のリチウムイオン電池を貸し出してくれた、G2Create・香川さんの出身チームでもある。
 WSC '96で総合4位の実力はあなどれない。
 「でっかいやつ」その3。育英高専、Ikuei Neo II。
 99年のオーストラリアでは、最後の最後でガメラを抜いていった。その発電量はガメラの3倍。二人乗りである分車体が重く、天候が崩れると不利。

11時5分、海ちゃんが予定通り5周を走り終えてピットイン。若松さんに交代する。人数が少なくて困るのはドライバー交代。短い時間に様々なことをしなければならないため、人手がないとどうしても時間がかかってしまう。隣の玉川大学のピットワークはメンバーの息が合っていてさすが。30秒もかからずにドライバー交代を終えてコースへと戻っていく。

発電状況は引き続き良好で、バッテリー残量も50%を維持している。しかし、徐々に強くなる西風は前線が近づいていることを示している。

あいかわらず前を行く青山学院は、同じラップを維持してガメラを引き離しにかかっている。育英高専はラップが安定せず争いから脱落しつつあるが、ガメラの背後から忍び寄り、追い上げにかかる三菱マテリアル。ここからが勝負だ。

 出場4回目の東海大学Solspirits、Trisol。
 着実に実力が上がり、安定した周回を重ねる。
 今年はガメラに先駆けてサイド空力パーツを装着。なんだか、カッコいいぞ。
 臨時開業・佐藤マッサージ室。ピットに患者の異様な悲鳴が響く。
 プライバシー保護のため、患者の顔は伏せさせて頂きました

写真をクリックすると動画でご覧いただけます。
(MPEG-4, 90kbytes)

12時25分、ガメラは7周目に入ったが、いよいよ風が強くなってきた。強い風の中、一定速度で走るとエネルギー消費にムラが出てしまうため、指示速度を変更する。追い風となる往路で速度を上げ、向かい風となる復路は速度を下げる。空気抵抗によるエネルギー消費はは対気速度の3乗に比例するので、こうすることでラップを維持しつつ、エネルギー消費を押さえることができる。

9周目に入ったところで、ドライバーの若松さんから連絡が入る。先ほど、ガメラのオドメーターが8000kmを超えたそうだ。いつのまにか、そんなに走っていたのか。オーストラリアで走った3000kmを差し引いても、WSRだけで5000km近く走ったことになる。

いつのまにか太陽を隠すようになっていた雲が、厚さを増してきていた。若松さんからの連絡では、折り返し地点側から天候が崩れてきており、雨も降り始めているようだ。発電量が低下するとともに、バッテリー残量が急速に落ち始める。




 「でっかいやつ」その4。Korea & 潟郎・キラキラファイター。
 今年は韓国からドライバーを迎え入れて、国際交流に力を入れる。

14時23分、最後のドライバー・堺さんに交代。ピット周辺はまだ薄日が差しているが、既に北の橋の向こうでは雨が降っている。計測データのチェックを省略して、急遽ガメラに雨対策を施す。モーターコントローラーやトラッカーに水が入れば一発でアウトである。重要な部分をビニール袋で覆ってガメラを送り出す。

昼間の貯金のおかげでバッテリーはまだ50%を維持しているが、このあとの日射が期待できないとなると、30%近くまで落ち込むはずだ。しかし、何とか目標の13周はキープできそうだ。青山学院は完全に14周ペース。1ラップの差をつけられてしまった。三菱マテリアルも引き続きペースを落とさず、ガメラのあとをつけてくる。その差わずか十数分。一方の育英高専は11周ペースでガメラ-三マテの争いから完全に脱落した。

(図) ガメラとライバル車のラップタイム推移

16時20分。2日目のレースが無事終了した。バッテリー残量はなんとか30%で持ちこたえたが、夕方の充電は期待できない。後ろを追う三菱マテリアルは最後の2周でペースが落ち、なんとかアドバンテージを残すことができたが、オーバータイム差はわずか13分。総合順位はあいかわらず8位。明日は三菱マテリアルとのオーバータイム差の争いになりそうだ。今晩のうちに寒冷前線が通過してくれればよいのだが・・・

(図)2日目終了時のバッテリー残量

大会2日目ガメラの計測データ

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