1999 WorldSolarChallenge  ManagementReport
Epilogue, 1999/10/23,26  Victoria Park, Adelaide

1999年10月23日 14:50 アデレード市街


行く人々が、ガメラを振り返る。"It's cute!" そんな声が聞こえてくる。ここ数日、ゴールを目指すソーラーカーには見慣れているものの、ここまで小さなソーラーカーはやはりもの珍しいようだ。

アデレード市街に入り、自動車の列をかき分けながらビクトリア・パークを目指すガメラ。一般車に混じって交差点で信号を待つガメラの姿は、さながら巨人の国に迷い込んだ小人のよう。普通の自動車には何のこともない市街地の道だが、停止と発進の繰り返し、ちょっとした坂道・・・非力なソーラーカーにとっては、ちょっとしたアスレチックコースである。

やはりソーラーカーには、陽の光を浴びながらどこまでも続く道を旅する方が、似合っているのだろうか。







ガメラは、ゆっくりとビクトリア・パークへ入っていく。先に到着したTJYメンバーがゴールゲートでガメラを待ちかまえていた。そして、ガメラがゲートをくぐった瞬間、周囲から沸き起こる歓声と拍手。張りつめていた緊張感がほぐれる。僕は、指令車に乗っていた池上さん、海ちゃんとともに、外へ飛び出して人々の輪の中に飛び込んでいった・・・




その輪の中でガメラを待っていたのは、やっとの事でチームへ合流したTJYの言い出しっぺ、東さん。本来ならレース後半で合流予定だったのだが、あまりにも早すぎるガメラのゴールでついにアデレードへ到着するまでには合流できなかった。

 「早すぎるよ・・・」

僕と目が合うと、東さんは嬉しいような、悲しいような、複雑な顔で迎えてくれた。ともかく、レース最終日にしてやっと、TJYオーストラリア遠征メンバーの顔が揃ったのだった。





1999年10月26日 19:00 ビクトリア・パーク、レセプション会場


数日間のアデレード観光を満喫した後の10月26日、僕らは再びビクトリア・パークへ足を運んだ。今日は、レース期間が終了してレセプション・パーティが開催される日。会場の特設テントを訪れた僕らは、なぜかステージのすぐ隣、来賓席のすぐ前の席に案内された。

その理由は、表彰式が始まってすぐに明らかになった。表彰式のスピーチは、ほとんど聴き取れなかったのだが、"Junkyard"の名前が呼ばれた瞬間、なにがなんだか分からないまま、僕らは舞台へ駆け上っていた。

その後、"Junkyard"の名前が呼ばれること3回、僕らはそのたびに歓喜し、表彰台へ登った。480Wクラスソーラーカーでの初完走によるグリーンハウス環境賞、プライベータークラス3位、そして、NTU best team spirits賞・・・

表彰台から降りた後、僕は東さんに抱きついてひたすら背中を叩いた。1年と少し前の秋田、僕らMeisterであの素晴らしい結果を出したとき、東さんが僕にしてくれたように・・・



This was the other side challenge of World Solar Challenge.

The most of people said to us, "you mean it"?

But we meaned it and we did it.

We proved that not only win high costed and large sized solar car, but also this type of small sized car have chance to cross the continent.

Thank you of all the people. You are kind and you are excellent !!


そこには、年齢も、職業も関係なかった。メンバー全員がお互いの健闘を讃え、心ゆくまで騒いだ。

「何よりも、ソーラーカーが大好き!」

ただその一つの想いだけで、年齢を、職業を、距離の壁をも超えて集まった仲間達の、何とも言えない一体感があった。

僕は、この素晴らしい仲間達とこの時間を共有できたことが、何よりも嬉しかった。そしてもちろん、僕たちが今この場にいるのは、自分たちの力によるものだけではない。

日本で応援してくれたTJYメンバー、陰ながらTJYを支えてくださった方々、熱い励ましのメールを送って下さった方々、そして、TJYに賛同してくれた全ての人々に・・・本当に、ありがとう。






赤須 貴子
池上 敦哉
木村 聡海
木村 英樹
合田 正樹
堺 一佐武
Takako Akasu Atsuya Ikegami Satoumi Kimura Hideki Kimura Masaki Gouda Isamu Sakai
佐藤 勇喜
鈴木 康慎
須藤 洋志
高橋 優
高原 泰
竹内 由香
Yuki Sato Yasunori Suzuki Hiroshi Suto Yu Takahashi Yasushi Takahara Yuka Yuka
立脇 修
土井 博文
中村 東
籾井 基之
若松 竜太
Osamu Tatewaki Hirohumi Doi Azuma Nakamura Motoyuki Momii Ryuta Wakamatsu


いつもながらの重い腰をやっと上げ、このレポートを書き始めたのが今年の始め。季節はいつの間にか夏になってしまいました。今回はいつもにも増して遅筆でしたが、半年を経てようやく書き上げることができました。

今回のレポートでは、ソーラーカーレースの一番おいしい部分、エネルギーマネージメントを中心据えて、私が感じたWSCの雰囲気をできるだけそのまま伝えるように努力してみましたが、いかがでしたでしょうか?

ソーラーカーレースを知らない方にも楽しんでいただけるよう、なるべくかみ砕いて書いたつもりですので、これを読んだ学生の皆さんが「よぉし、俺もソーラーカーを創ってWSCに出てやるぜ!!」と思うようならしめたものです。(^^;

また、今回のレポートに関しては多くの方々のお世話になりました。たくさんの写真を提供してくださった堺さん、木村さん、当時を振り返る材料として気象衛星の写真を提供してくださったSさん、技術的な記述部分に関してアドバイスをしてくださった池上さん、木村さん。そして、暫定公開中のこのレポートを読んで応援のメールを下さった方々。そして、全てのTJYメンバーのみなさん。ほんとうにありがとうございました。

私の舌足らずな文章に最後まで付き合ってくださり、どうもありがとうございました。下記のメールアドレスにて、ご意見、ご感想、記述の誤りの指摘などお待ちしております。

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小森 裕介
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